築30年の家が寒い・暑い理由──断熱材の見直しでできる現実的な対策とは

築30年を超える住宅で、「夏はムワッと暑く、冬は底冷えするように寒い」と感じたことはありませんか。冷暖房を使ってもなかなか効かず、電気代ばかりかさむ――こうした悩みの根本にあるのが、断熱性能の不足です。目には見えませんが、住宅の快適さを左右する最も大きな要因のひとつが、断熱材の存在とその状態です。


1980年代から1990年代前半にかけて建てられた家は、当時の断熱基準が現在よりもはるかに緩やかでした。そのため、断熱材が入っていても薄かったり、施工が不十分だったりすることが珍しくありません。また、湿気や経年劣化によって断熱材の性能が大きく落ちているケースもあります。断熱材は永久に効果を発揮するものではないのです。


そのような中で、築30年クラスの住宅に住む方の間では、「断熱を見直したい」「断熱材を入れ替えたい」という関心が高まっています。けれども、どこをどう調べればいいのか、どこから手を付けるべきかが分からず、不安を抱えたままにしている人も少なくありません。ここでは、断熱材の現状と、見直しの選択肢について現実的な視点から掘り下げていきます。




古い家を“快適空間”へ変える力

断熱の見直しは、「古くなったから元に戻す」だけの作業ではありません。むしろ、快適な暮らしと光熱費の削減、そして健康面の改善にまでつながる、生活全体に影響を与える重要な工事です。たとえば、外気温の影響を受けやすい壁や床を適切に断熱することで、部屋の温度差が小さくなり、ヒートショックのリスクを減らすことができます。


また、断熱改修によって冷暖房効率が上がれば、毎月の光熱費を大きく抑えることもできます。初期費用こそ必要ですが、長期的に見ればコストパフォーマンスの高い選択となります。さらに、家の中が一年を通じて快適な温度に保たれることで、家族のストレスも軽減され、生活の質そのものが向上します。


築30年の住宅でも、適切な方法で断熱を見直せば、今の暮らしを大きく改善することが可能です。見た目は古くても、断熱性能を高めることで“中身の整った家”に生まれ変わることができます。住宅は年数が経てば価値が下がると考えがちですが、断熱のように住環境を底上げする工事は、資産としての価値を守ることにもつながるのです。


このように、断熱材の見直しは「住み続けるための手入れ」であると同時に、「暮らしの質を上げる再投資」としても意味があります。




“やればいい”では済まない技術

断熱リフォームは、「古い断熱材を取り除いて新しいものに交換すれば終わり」といった単純な作業ではありません。なぜなら、築30年の家には、それぞれ異なる構造上のクセや、見えない劣化のリスクが潜んでいるからです。たとえば、壁の内部に湿気がこもっていたり、断熱材が本来入っているはずの場所にまったく施工されていなかったりするケースもあります。


また、断熱材を入れ替えるには、既存の壁や床を一部解体する必要があるため、施工には慎重な判断が求められます。コストを抑えるために一部だけ工事するという方法もありますが、その場合は断熱効果が限定的になり、かえって中途半端な結果になることもあります。どこを重点的に改善するか、工法や素材はどうするか、家ごとに最適な判断が必要になります。


さらに、断熱工事には確かな施工技術が求められます。隙間なく断熱材を詰め、気流を遮断し、室内の温度が安定するよう仕上げるには、経験に裏打ちされた知識と手際が欠かせません。DIYで済ませようと考える方もいますが、断熱の本質は「空気の動きまで読む」繊細な作業です。専門業者に相談し、適切な提案を受けることが、後悔のない結果につながります。




“住まいの医者”のような視点を持つ人

築30年の家における断熱改修では、「ただ材料を交換する」だけでは成果が出にくいのが現実です。そのため、現場で求められる人物像も、単に作業をこなす職人ではなく、住宅全体の状態を診断し、的確に判断できる“住まいの医者”のような視点を持った人です。


たとえば、外壁の裏に湿気がたまっていると、断熱材を新しくしてもカビや結露の原因になってしまいます。また、天井や床下など目の届かない場所に断熱材が施工されていないケースもあるため、全体の断熱ライン(熱の出入り口)を把握して対処する必要があります。こうした判断を行うには、断熱に関する基礎知識だけでなく、構造や気流の動きへの理解も求められます。


また、住まいは一軒一軒、造りや劣化状況が異なるため、現場ごとに柔軟に対応する力も重要です。マニュアル通りの施工だけでは通用せず、職人としての応用力と提案力が生きてくる場面が多くあります。経験を重ねながら、理論と実践の両面で成長していける人こそ、この分野で活躍できる人材だと言えるでしょう。


断熱改修という仕事は、表面的な作業ではなく、住まい全体を理解し、長く快適に暮らせるよう整えていく、いわば“住宅の健康診断士”のような役割を担っています。その責任とやりがいに共感できるかどうかが、大きな分かれ道になります。




断熱から住宅性能の専門家へ

断熱改修の現場で経験を積むと、単なる施工技術にとどまらない専門性が身についてきます。たとえば、建物全体の断熱ラインを読み解く力や、素材ごとの性能差を考慮した選定力、さらには気流や湿気の動きまで含めた総合的な判断力など、住宅性能全体に関わる視点が養われていきます。


こうしたスキルを深めていくと、次第に「断熱だけを扱う職人」から「住宅全体の性能を提案できる専門家」へとキャリアの幅が広がります。近年はZEH(ゼッチ)と呼ばれる省エネルギー住宅や、パッシブ設計といった高性能住宅が注目されており、断熱に詳しい施工者のニーズは増えています。現場での経験を土台に、建築士や住宅診断士、エネルギーコンサルタントといった資格取得を目指す方も出てきています。


また、専門知識を活かして独立・起業する道もあります。地元の工務店や設計事務所と提携して、断熱改修を中心にリフォーム全般を請け負うなど、柔軟な働き方が可能です。知識と信頼を積み重ねれば、単価の高い仕事を継続的に受注することも十分に現実的です。


「古い家=価値がない」という考え方は、今では通用しなくなっています。むしろ、性能面を見直すことで資産価値を高められる時代です。自分のキャリアを長く活かせる道として、断熱分野からのステップアップは十分に狙えます。


断熱の仕事に興味を持たれた方は、採用の考え方や教育方針をまとめた下記ガイドラインも参考にしてみてください。

▶︎ https://oogi-d.jp/guideline




30年前の家は、“資産”に変えられるか

家は古くなるものですが、「古い=価値が下がる」と決めつける必要はありません。とくに断熱という視点から見直せば、築30年の家でも住み心地を大きく改善し、再び“価値のある住まい”へと近づけることができます。


もちろん、費用や工期、施工業者との相性など、考えるべき要素は多くあります。それでも、今の生活をより快適に、そして将来にわたって安心して暮らしていくためには、断熱材の状態を見直すことが一つの有力な選択肢になります。


「この家を、あと何年住み続けたいのか」。その問いに向き合ったとき、断熱の見直しは思った以上に現実的で効果的な対策であることが見えてくるはずです。


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